| ここ近年JR東海のCMで使用されている名曲「マイ・フェイヴァリット・シングス」。この曲を聴くと京都の四季折々の風景が脳裏に浮かぶ方もいるのでは。もともとは1959年のミュージカル『サウンド・オブ・ミュージック』で使われ、65年のジュリー・アンドリュース主演の同名映画で世界的に知られるようになった楽曲。ジャズ界では60年に同曲を録音したジョン・コルトレーンの名演以来スタンダードと化し、様々なミュージシャンに取り上げられているが、ピアノ・トリオ・ヴァージョンの決定打とでもいうべき名演がいよいよ登場。
演奏するのは2004年1月に発売した『ワルツ・フォー・デビー』が好評のドン・フリードマン・トリオ。フリードマンの知的で流麗、かつアグレッシヴなタッチは近年さらに円熟味が増してきたとの評価が高い。その独自のリリシズムあふれる世界観に名手ジョージ・ムラーツとルイス・ナッシュの両名が加わって盛り上げる。表題曲はもちろん、ジョン・コルトレーン作曲の「ジャイアント・ステップス」、スタンダードの「アスク・ミー・ナウ」「ネヴァー・レット・ミー・ゴー」などメロディの美しさを楽しむ内に、演奏者同士がお互いを触発しながら音楽を展開してゆく演奏内容に思わず引き込まれてしまう。
前作で評判の高かったフリードマンのオリジナル曲ももちろん収録。今作のために書き下ろしたブルース曲「シュムーズ・ブルーズ」(タイトルは「ブルース」を使った言葉遊び。schmoozeとはたわいもない長話の意、bloozeはブルースの別称)、オーネット・コールマンと活動していた時期に作曲した「ハーフ・アンド・ハーフ」(曲名の由来は速いテンポとゆっくりしたテンポが半分ずつ混在するため/その展開にも注目)、そしてソロで演奏される「サマーズ・エンド」。ジャズの醍醐味が凝縮された、入門者から上級者まで肩の力を抜いて心から楽しめるアルバムの登場である。 |